(untitled)

誓いを果たして諦めるのだと努めている時になって、彼女はまた髪を結って。
手を伸ばせばすぐに届く位置にいて。

電話ではうんざりした口調でまだ付き合っているのだと言ってた彼女。
嫌いならそう言って欲しくて、彼女を目の前に諦めきれないこと、諦めたくないことが溢れてしまった。

困りますとだけ言う彼女。なのにみとれてしまって、どうにもならずもう髪を結わないで欲しいのだと。
本当はこのまま一生、みとれ続けたいと思っていながら。

それは自分の自由だという彼女、でもだから諦めきれなくてけっきょく彼女を困らせてしまうことになるのだと思って。自分にはただもうお願いするしかなくて。

自分はもう、まるで駄々っ子で。

それでまた沈黙のまま仕事に戻って、帰り際に彼女は「お疲れさま」と言い残して。
カップは元の場所に戻ることなく、ただ自分の居場所を奪い去るかのように。

激しく惹かれて、いとおしくて、敵わない。

自分で自分が、どうにもできない。

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