苦しいこと

今日の彼女は、特別綺麗で。
背後から聞こえる咳払いさえもが、愛おしく感じて。

今日は残業するのかと思っていたら、髪を結ったまま帰宅してしまって。
祈る気持ちで水屋を開けたら、カップは元の場所へと戻ってしまっていて。

もう嫌なのだと思う。心の底から。

彼女が帰って、肩を落としてしまうことが。
ただただ黙っていながら、目を奪われることが。
何ともないふりをして、揺さぶられていることが。
髪を結うのを、待ちわびていることが。
心が乱れて、寝付けないことが。
夢に現れて、目が醒めてしまうことが。


打ち明けたい。もういちどだけ。

まだあなたを想っていること。
ずっとそばに、いてほしいこと。
あなたでなければ、駄目だということ。

打ち明けたいのに、もうこれで最後にしないといけないと思うと、彼女の心をうつような言葉が思い浮かばない。


愛おしすぎて、苦しい。

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