犬モ歩ケバ

今日はあの子の命日で、お母んの誕生日でもある。
６６年前のこの日にお母んは産声をあげ、１年前のこの日あの子は帰らざる者に。

食事を口にせず、水だけで生きた９日間。

「渇いてはいないか。」 日中気をもんでも異動１年目の慣れない仕事はそれを許さず、水を口元へと与えることができるのは朝と夜の２度だけ。

小便はたれ流し。

異臭が滲みついた身体を床ずれしないよう抱えるのだけれど、あまりの刺激臭に嘔吐しかけた夜も。
愛おしく想っても、それを薄情にも拒絶する自分の肉体。

そしてこの日の夜、ついに呼吸を止めたあの子を前に、哀しいと振る舞いながら「ああ、やっと」との思いでほっとしてしまった自分。

あの子が何時逝ってしまったのか、誰も知らない。
ただ、敢えてこの日を選んだのは、あの子の意志だったのだと思う。


胸に溜めてた、酷い真実