狂れること

きっと人事異動のせいで、彼女の場所が占拠されてただけなのだと。
嬉しく期待したい、揺さぶられている自分に、厳しく言い聞かせて。

昨日の帰り片付け時は注意深く、もと彼女の場所をみた。
空いてた。

そして彼女のカップは、いつも自分の置いてる場所のそばに。
溢れそうになるのをこらえながら、自分はカップを彼女のそばに。
いつもの場所なのだけれど、意味のあることとして。

彼女は意識しているのだろうか。
惑わすつもりのない確信犯だったとしたら、これも愛おしいのに。


実はこの彼女の引越しは、先週金曜日の帰り時から。
振られてからずっと、彼女には悪質つきまといのような恐怖を抱かれたくなくて、細心の注意を払ってきたつもり。
炊事場でも、コピー室でも、一緒にはならないように。カップの置き場所だって。

他人にとってきっとどうでもないこの些細なことが、自分にとっては難解な事件であって。
あの日は掻き乱されて、心落ち着かず夜中に車を走らせて、阿蘇まで。

気が狂れる。

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